ビタミンDは骨粗しょう症だけでなく感染症や心血管疾患や神経筋疾患、自己免疫疾患発症にも関連すると言われており、COVID-19の重症化因子としても注目される重要な栄養素です。世界的にもビタミンD不足・充足状態に対する関心が高まる一方で、ビタミンDは必要基準範囲が完全に確立されていないことが課題の1つとなっていました。
東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 越智小枝教授らは、島津製作所と新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用して、2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518 人を対象に調査を実施。その結果、98%がビタミンD不足に該当していたことを2023年6月に発表しました。
研究結果
● 日本で初めて血清中の基準濃度を計算
こちらの研究では、新開発・完全自動化の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用し、日本で初めて血清中 25-ヒドロキシビタミン D(25(OH)D の基準濃度を計算することを実施。
● 健常人の98%がビタミンD基準濃度以下に
算出した結果は、男性 7–30 ng/mL、女性 5–27 ng/mL(全体 6–29 ng/mL)と、健常人の 98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミン D 基準濃度(<30 ng/mL)に達していないことが判明しました。
● 植物性のビタミンDがほぼ検出されず
測定されたビタミン D のほとんどが動物あるいは日光由来のビタミン D3。
シイタケなどきのこ類に含まれる植物由来のビタミン D2はほぼ検出されない結果に。
●年齢が低いほどビタミンD不足
こちらの研究により、年齢が低いほどビタミン D 不足の割合が高いことが判明しました。
ビタミンDは魚類ときのこ類に主に含まれるビタミンですが、こちらの研究結果から、日本人の食生活の変化によって、現代社会では特に植物由来のビタミンDが摂取されなくなったことが推察されます。
ビタミンDは前述の通り、骨粗しょう症をはじめ、感染症や心血管疾患や神経筋疾患、自己免疫疾患発症にも関連すると言われており、コロナなどの感染症の重症化因子としても注目される重要な栄養素です。
今後の超高齢化社会へ向け、骨粗しょう症・骨折の予防につながるビタミンDの摂取はますます重要となっています。ビタミンDが不足している現状への早急な介入とともに、ビタミンD不足を引き起こすその他の原因についても解析が必要です。

※血清中のビタミンD量ごとの人数
【参考論文】
https://jn.nutrition.org/article/S0022-3166(23)05587-6/fulltext






