前回のコラムでは、ビタミンDの様々な役割についてご紹介しました。ビタミンDが、体内の多くのところで関わっていることが理解できたと思います。
今回からは、ビタミンDの効果・効能を、より深く、より具体的にご紹介していけたらと思います。まず今回は、ビタミンDの代表的な役割でもある「骨の健康」にフォーカスして、ビタミンDが骨の健康にどのように関わっているのかを見ていきたいと思います。
ビタミンDがカルシウムの吸収を助け、骨を強く保つ
ビタミンDは人間の腸の中で、骨を強くするために欠かせない栄養素であるカルシウムを吸収する「扉の鍵」のような役割を果たします。私たちがカルシウムを摂取しても、ビタミンDがなければそのカルシウムは腸から体内まで効果的に吸収されず、骨に十分に届きません。
具体的には、ビタミンDは腸でのカルシウム吸収を促進し、血中に送り出すサポートをするだけでなく、カルシウムが適切に骨まで運ばれて沈着するプロセスもサポートします。この仕組みは、ビタミンDがカルシウムの「配達員」となって、必要な場所(骨)まで正確に運ぶイメージです。
近年の研究では、ビタミンDの不足によりカルシウムの吸収を妨げるだけでなく、骨の密度低下を引き起こしやすいことが報告されています【1】。特に冬季や日照時間が少ない地域に住む人々、または屋内生活が中心の人は、ビタミンD不足に陥りやすく、骨の健康リスクが高まる可能性があります。そのため、太陽の光を浴びたり、ビタミンDを含む食品を摂取することで、しっかりと骨を強化することが大切です。
骨折や骨粗しょう症を防ぐためにビタミンDが重要な理由
皆さんは、骨粗しょう症という言葉を聞いたことはありますか?
骨粗しょう症とは、骨がスカスカになって弱くなり、簡単に骨折しやすくなる病気です。これは、家の柱がしっかりしていないと、ちょっとした揺れで家全体が倒れやすくなるのと同じ理屈です。ビタミンDは、骨の「柱」をしっかりと保つために必要不可欠であり、骨粗しょう症の予防に大きな役割を果たします。
例えば、ビタミンDが不足すると、体は血液中のカルシウム濃度を維持するために骨からカルシウムを引き出してしまいます【2】。つまり、「配達員」がいないとカルシウムが効率よく吸収できずに、骨から壊してカルシウムを無理やり取ってこないといけなくなる、というような状況です。この状態が長く続くと、骨はどんどん弱く、もろくなり、特に高齢者においては骨折のリスクが高まります。
最新の研究では、ビタミンDの適切な摂取が骨折の予防に効果的であることが示されています【3】。特に、高齢者や閉経後の女性は、日光や食事を通じてビタミンDを意識的に摂取することが、骨粗しょう症や骨折のリスクを防ぐことにつながります。
もちろん、子供の頃からのビタミンDの摂取は骨密度低下の予防にもつながるので、年齢に限らず常日頃から意識した方が良い栄養素です。
お子さんの成長を促すためにカルシウムを意識して摂取させる大人はいますが、ビタミンDを意識する人はまだまだ多くはいません。カルシウムだけでなくビタミンDも一緒に摂取することで相乗効果が得られるので、ぜひ今後はビタミンDも意識しながら食事を組み立てていきましょう!
参考文献
- Holick MF. Vitamin D deficiency. *N Engl J Med*. 2007;357(3):266-281.
- Rizzoli R, et al. Vitamin D supplementation in elderly or postmenopausal women: a 2023 update. *Osteoporos Int*. 2023;34(4):789-804.
- Martineau AR, et al. Vitamin D for the prevention of acute and chronic disease: a meta-analysis of randomized controlled trials. *Lancet Diabetes Endocrinol*. 2019;7(12):995-1007.






